学校長挨拶

「過ちて改めざる、これを過ちという」

貫井中学校長 桐野 和之

「過ちて改めざる、これを過ちという」。
 この言葉はどのような意味かわかりますか。
 まず「過ち」という言葉の意味は「ついうっかり失敗してしまったり、間違ったりしてしまうこと」を言います。そして、「改めざる」という言葉は「改めないこと」、つまり「うっかり失敗したことや間違ってしまったことを二度としないように改めようとしない、あるいは直そうとしない」という意味です。また、その次にある「これを過ちという」というのはつまり、「このことを本当の過ち、本当の失敗であり間違いである」という意味です。
 この言葉は中国の孔子の言った言葉です。孔子が生きていたのは今から2500年以上前の中国です。孔子は人としての生き方について深く考え、人としての礼儀や態度、思いやりの心などをとても大切にした人でした。さらに、政治家に対しても、政治をする人自身が礼儀や態度、思いやりのある心づかいなどを大切にして、道徳を重んじた政治を行うべきだと考え、中国の各地を回って、それぞれの国の政治を行う人たちにその考えを広めようと努めました。
 しかし、その願いは、なかなか実現できませんでした。思いが果たせなかった孔子は、自分が産まれた魯という国に戻り、たくさんの弟子たちを教えて育てることに専念するようになりました。
 そのようなある日、孔子は弟子たちに、「人はいろいろと失敗してしまうものだ。それは仕方のないことである。だから、そのような失敗を二度としないように改めていくことが、人としてとても大切な生き方なのである。しかし、失敗をしたにもかかわらずそれを反省しようとせず、直そうともしないとすれば、そのような考え方や態度こそが、人としての生き方の大きな過ちなのである」と教えたのです。そのときの言葉が「過ちて改めざる、これを過ちという」という言葉だったのです。
 皆さんも、ついうっかり間違えたり、失敗したりするようなことがあると思います。そのようなとき、すぐに「ごめんなさい」「すみませんでした」と謝ると思います。そして、二度とそのようなことをしないように、気をつけるようにすると思います。そのようにすることが、人の生き方としてとても大切なことなのです。その反対に、言い逃れをしたり、ごまかしたりすることは、よくないことです。ついうっかり間違えたり、失敗したりしたときには、恥ずかしいという気持ちが起きるかもしれませんが、すぐにそれを認めて謝るとともに、二度とそのようなことをしないように努力するべきです。
 孔子は人としての生き方にかかわるすばらしい教えをたくさん残しました。そこで、孔子が亡くなった後、多くの弟子たちが、孔子の教えてくれたすばらしい言葉を『論語』という本にまとめました。「過ちて改めざる、これを過ちという」という言葉も『論語』のなかにある言葉の一つです。みなさんにも一度、この論語を読んでみてほしいと思います。