全校朝会講話

2月1日(月) 大人の仕事

先週から、プールの前の投擲板(とうてきばん)がきれいに塗り直されています。
9月頃に、校長先生はくすんだ投擲板を見て、事務の六本木さんに「なんとかならないですかねえ」と相談しました。六本木さんは、「わかりました。できるかどうか調べてみます。」と言ってくれました。その後で、事務の六本木さんが区役所に相談してお金をいただくことができました。

そこで、校長先生は、どんな投擲板がいいかを考えました。子供たちが元気に空に羽ばたくようなのが良いなあ、と考えましたが、デザインが思い浮かびません。そこで、図工の森田先生に相談しました。森田先生は「わかりました。やってみましょう。」と言ってくれました。校長先生は、投擲板だから運動の役に立つものが良いなあ、と考えました。そこで体育主任の中西先生に相談しました。中西先生は、「わかりました。森田先生と相談して考えます。」と言ってくれました。

六本木さんは工事の方に連絡をして、どのように工事を進めるのかの相談をしてくれました。六本木さんと森田先生と中西先生が、詳しくデザインを決めて、工事会社の方に伝えました。工事の方が来て、雨の日にも作業を進めてくれました。

これが大人の仕事です。何をすれば良いのか、どうすればもっと良くなるのか、それぞれが自分のできることを考えて、こんな大きなものを作りました。

校長先生のお仕事は、どんなことをしたいかを考え、仕事をする皆さんにお願いする。そして、その仕事の意味をこうして子供の皆さんに伝える。校長先生、先生方、それぞれが自分の仕事をする。それが大人の仕事です。

プールの裏に、堆肥置き場という名前のゴミ捨て場がありました。10年以上もいろんなものを捨ててきたので、土、コンクリート、ゴミが溜まって、何百キロもの山になっていました。校舎を管理する責任者の副校長先生はそれを見て、いやだなあ、危ないなあと考えました。そして、一人でジャージに着替え、何十袋ものゴミ袋を用意して、たった一人で、汗だく泥まみれになって、全てを片付けました。

誰に言われたからでもない。自分の仕事としてやらなければいけないと考えたからやる。誰かがやってくれるだろう、ではない。それをするのが自分の仕事だと考えたから、やる。やりきる。それが、大人の仕事です。

2月8日(月)

この頃、朝の校門での挨拶に、立ち止まって挨拶をする人が増えてきました。これは「立礼」と言って、それまでやっていたことを止めて、きちんと立って姿勢を正し、礼をするという、とても相手を大切にする礼の仕方です。

こういう相手や場所を大切にする仕方、作法のことを「礼法」と言います。校長先生がそうしてください、と言ったわけではありません。その人が、自分の気持ちを表すために、立ち止まるのが相応しい、と考えたのでしょう。自分で考えて、そうするべきだと思ったから、そうする。とても立派です。

もちろん、校長先生にいつも立礼をしなさい、と言っているのではありませんよ。いろいろな気持ちの表し方があります。いろいろなやり方を知っていて、時と場所に合わせて選ぶことができる人は、かっこいいなあ、と思います。

さて、今週は読書旬間で、本の話をすることになっています。先日、5年1組の1学級1取組で「ビブリオバトル」をやる授業を見せてもらいました。ビブリオバトルというのは、友達と自分が読んだ本を紹介し、誰の紹介が一番興味を引いたか競うゲームです。本の良し悪しではなく、誰が一番おもしろさを伝えられるかを競います。

その中で、ある人は、昔の名作と言われる本、夏目漱石の「こころ」という作品を紹介してくれました。この作品には、謎も事件もありません。主人公や周りの人が一生懸命に生きていく中で起きる迷いや悩み、喜びを語っています。ある人は「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」という本を紹介してくれました。この本は、実際に戦争に行って人を殺してしまった、殺すしかなかった人が、戦争から帰ってきて、そのことに悩み苦しんでいることを訴えるお話のようでした。紹介を聞いて、とても読んでみたくなりました。みんないろいろな本を読んでいるのだなあ、伝えるって良いなあ、と感じました。

それでは校長先生が紹介します。
みなさんは、夜、空を見上げたことがありますか。空には何が見えましたか。月や雲、そして星も見えたでしょう。その星の中に、火星という星があります。火星はとても遠くにあって、ロケットで行きに半年、帰りに半年はかかります。探検などをしたら、もっと長く、宇宙にいることになります。そこでもし、何かあったらどうなるでしょう。水も空気も食べ物もない、そんなところで。

校長先生が紹介するのは、アンディ・ウィアーという人が書いた「火星の人」です。主人公マーク・トワニーは、仲間と一緒に、火星に調査に行きましたが、事故があって、たった一人火星に取り残されてしまいます。仲間たちはロケットで飛び去り、次のロケットが来るのは4年後。でも、食料も水も空気も4ヶ月分くらいしかありません。

この物語では、超能力も魔法も宇宙人も現れません。奇跡のような出来事が起きてマーク・トワニーを助けてくれるわけではありません。もう死んでしまう。どうにもならない。でも、マークは希望を失いません。一つずつ、一つずつ問題に立ち向かい、解決していきます。さあ、マークは地球に帰ることができるのでしょうか。その続きはぜひ自分で読んでみてください。

と、言いましたが、低学年のみなさんには難しい本です。6年生ならもう読めるかな。でも実は、この物語は映画になって、「オデッセイ」というタイトルで公開中です。中学年のみなさんくらいからならわかるかもしれません。本だけでなく、映画で楽しむのも良いですね。

さあ、読書旬間。楽しい本をたくさん読んで、お友達にも紹介してあげましょう。お話を終わります。

2月22日(月) やる気スイッチ

今日もたくさんの人が表彰を受けました。自分ががんばった成果が目に見えると嬉しいですね。とてもやる気になります。

 やる気スイッチ、という言葉を聞いたことがありますか。TVのCMで流れていますね。そんなもの、あるのかなあ。あるのです。「やる気」はどこにあると思いますか。頭の中、いろいろなことを考える場所、脳の中に「やる気」も生まれます。でも、脳の中ではスイッチは押せないよ。

そう、実はやる気スイッチは身体にあります。脳は身体の一部です。脳が身体を動かしている、つまり脳と身体のいろいろな部分は繋がっています。脳が身体を動かしてもいるし、実は身体が動くと脳も動くのです。

以前、頭の良くなる薬の話をしましたね。姿勢を良くすると頭が良くなる。これも身体が脳を動かす仕組みを使ったお薬、脳を動かす手立てです。やる気スイッチも同じです。身体を動かすことで、脳を動かす、つまりやる気を起こさせるのです。どんな風に動かしてもやる気スイッチが入るわけではありません。

やる気があるときに思わず出る動作、声、表情などがあります。「やるぞ!」、「よっしゃ!」、「頑張るぞ!」などです。逆に、これらの動作や言葉を出すと、脳が「あ、やる気があるぞ」と勘違いをします。そして実際にやる気がでるのです。これが「やる気スイッチ」です。

朝、学校に来るときに、「なんだかやる気が出ないなあ」と背中を丸めて歩いていると、気分がどんどん落ち込んできます。「落ち込むスイッチオン」の状態です。背筋を伸ばして、大きな声、明るい声で「おはよう」と声を出します。そうすると、実際にやる気が出ます。明るくなります。そうすると、物事がいいほうに動き出します。友達の顔も明るくなります。

今日、正門で元気に声を出していた人、そういう人は「やる気スイッチ」を押して、自分を元気にしたのです。実はね、校長先生も同じなのですよ。

2月22日(月) 伝えると言うこと

校長先生は、皆さんにお話をするときに、マイクを使いません。なぜだと思いますか。

いくつか理由があります。一つ目の理由は、みなさんが注目しやすくする、話を聞きやすくするということです。スピーカーという機械を通すと、言葉は音のように聞こえます。
例えば、電車の放送などは気にしないと何を言っていたのか気付かないことがあります。音楽や騒音と同じような音の仲間になってしまい、話に注目しづらいのです。

また、人間は無意識に音の出る方を見てしまいます。ですから、スピーカーから聞こえる音と、話している校長先生の姿を結びつけるのは、実は難しいことなのです。

直接の声で話すと、その声は、その人が出した言葉として皆さんに届きます。つまり、皆さんにとって、聞きやすい言葉になるのです。

二つ目の理由は、思いを伝えたいからです。校長先生は、皆さんに何かを覚えてもらおうとは思っていません。毎週朝の5分間だけ話す校長先生の話は、低学年の人には難しいです。低学年の人に合わせると、高学年の人には優しすぎます。また、どちらにしても1週間にたった一度だけしか聞いてない話の内容を覚えるのも無理です。忘れてしまいます。

それでも構いません。校長先生が大切にしていることは、話の中身よりも、校長先生が子供のみなさんに一生懸命伝えたいことがある、大人の人が皆さんを育てたいと思っているという気持ちを伝えたいのです。

気持ちは、機械を通してはうまく伝えられません。校長先生が必死に大声を上げて、皆さんの前で頑張っていることを見てもらうこと、みなさんに伝えようとする姿を見てもらうことが大切だと思っています。

もちろん、そのためには絶対的な音の大きさが必要です。いくら、生の声でも大きさ自体が足りないと届きません。ただし、校長先生も生まれつき大きな声を出すことができたわけではありません。夏休みの後などのように、しばらく大きな声を出していないと、朝会のあと、のどをつぶしてしまいます。

ですから、校長先生は、大きな声を出すことを意識して練習しています。それも、ただ大きくすると、のどを痛めてしまうので、音楽の先生が教えてくれるように、肺を膨らませ、のどを開き、口からのどまでを使って音を響かせるようにしています。これは声を出すトレーニングと、聞いてもらおうという気持ちをもつことで、できるようになることです。

人には向き不向きがありますから、全員ができることではありません。ですが、例えば教室で、自分の言葉で発表するときに、声を届かせることはたぶんできます。今はインフルエンザ対策でマスクをしている人も多いですが、発表するときにはマスクを外します。それは、まず気持ちです。マスクを外して、少しでも自分の声を届けたいと思っていますよ、という気持ちを表すことです。

その気持ちがあれば、周りの人はきっと皆さんの言葉を一生懸命聞いてくれるでしょう。ちょうど今、みなさんが一生懸命聞いていてくれるように。ほとんどの話は忘れて構いません。ですが、少しだけ最後の言葉を覚えてください。自分の言葉を届けましょう。友達に気持ちを伝えるために、自分にできる最初の一歩です。