令和7年度 校内研究について
研究主題
いきいきと他者と関わり合い、自分の考えを深める児童の育成
〜話合いを通しての主体的・対話的で深い学びの実現を目指して〜
低学年
第一学年(国語)【おおきなかぶ】
第1学年の国語科では、「おおきなかぶ」を教材として、話合いの中ですすんで自分の考えを伝え、友達と交流できるようになることを目指した授業を実践しました。これは、学校全体で育成を目指す、『他者とのかかわりの中で自分の考えを広げようとする児童』の土台を築くための取り組みです。
授業は、児童が物語を読んだ後に抱いた感想や疑問から問いを設定し、児童自身がその問いを解決していく形で展開します。根拠を文章の中から探すことにより、児童は読みを深めていくことができます。また、たとえ間違ったことを言ったとしても受け入れられるという受容的な雰囲気がつくられているため、児童は安心して話合いを進めることができます。合いの後半では、児童が最後まで意欲的に活動を続けるための工夫として、「揺さぶり発問」を取り入れました。
こうした学習活動を支えるために、物語の「いつ」「どこで」「だれが」「なにをした」といった基本事項を押さえる時間を設けたり、本文全体を番号付きの1枚のプリントにまとめたりしています。このプリントにより、児童は物語の流れや登場人物の心情の変化を捉えやすくなるだけでなく、自分の考えの根拠となる文を友達同士で具体的に示しながら確認し合うことが可能になります。さらに、全体での話合いの前に、まずは自分の考えの根拠を文章の中から探し、近くの席の児童と意見交換する時間を設けることで、全ての児童がスムーズに話合いに参加できるよう工夫しました。

第二学年(国語)【ミリーのすてきなぼうし】
第2学年は、発問に対して答えようと挙手をする児童が一部の児童に限られる傾向にあることが課題でした。ワークシートやノートなどに自分の考えを詳細に書けている児童であっても、発表することに抵抗を感じる様子が見られました。この課題を解決するために、自分の意見を安心して言える環境設定や、児童の疑問を基にした発問を増やし、話合う必然性のある状況を作る工夫を続けるなかで、少しずつ発言できる児童が増えているところです。
7月に行った国語「ミリーのすてきなぼうし」では、登場人物(店長、ミリー、ママ)の中で一番すてきな人は誰かを考えました。本文を1枚のプリントに収め、全文を読みやすく工夫したことで、叙述に戻ってすてきだと思う理由と根拠を明確にすることができるようになってきました。その後、「揺さぶり発問」として、登場人物の三人に共通する「すてき」は何かを考え、話し合いました。全体で話合いをするなかで、「三人とも、やさしい」「みんな、だれかに親切にしている」と登場人物の共通点を探ることができました。

中学年
第三学年(国語)【まいごのかぎ】
第3学年の目指す児童像は『自分の思いや考えを持ち、他者とのかかわりの中で考えの違いや良さを見いだし、それを生かすことで、自分の考えを広げ深められる児童』です。そのため児童が自分の考えに理由を付けて話す力を高めることで、目指す児童像に更に近付くと考え、学年全体で授業づくりに取り組んでまいりました。
そこで、国語科の授業では、「登場人物の変化に気を付けて読み、りいこ日記を書こう」という単元の目標を通じて、様々な工夫をしました。特に、叙述に基づいて理由を示す指導を重視し、その手だてとして、本文を1枚のプリントに収め、文章に番号を付けることで、児童が話し合いの際に根拠となる叙述を明確に示せるようにしました。これにより、友達が本文のどこを根拠に話しているかが分かり、話合いが活発になるだけでなく、個々の読みを深めることにもつながりました。
さらに、児童の思考を活性化させるために「揺さぶり発問」を取り入れました。例えば、「りいこにとってかぎをさしたことは、本当によけいなことだったのか」といった発問は、中心人物への見方を深め、物語の核心に迫る助けとなりました。授業の終末には「学びの成長タイム」を設けることで、児童が話し合いを通して自己の学びの変容や成長を振り返る機会を大切にしました。これらの実践により、児童は根拠を明確にした上で、自分の考えを広げ深めることができるようになってきています。

第四学年(社会)【健康なくらし ごみの処理と再利用】
第4学年の児童は、自分の考えと友達の考えを比較し、「なるほど」と思ったり「自分はこう思うな」と感じたりすることはよくできていました。しかし、話合いを通して自分の考えをよりよくすることに課題を抱えていました。
この課題に対し、授業では話合いをより活発にするための様々な工夫を凝らしています。具体的には、「相互指名」を取り入れ、ホワイトボードを見ながら同じ意見や反対意見の児童を指名していくことで、考えを広げる環境を整えました。また、全体での話合いに「ポジショニングトーク」を取り入れることで、全員が意思表示し、自分の立場を明確にすることのできるようになりました。ネームプレートをホワイトボードに貼る工夫は、友達の考えも一目で理解できる助けとなっています。
さらに、友達の意見を受けて話し合いを深められるよう、「同じ」や「付け足し」、「反対」といった「話型」を示すことで、意見の連結や展開を促しました。児童の思考を再度活性化させるために「揺さぶり発問」も導入し、初めの話合いで考えがまとまってきたところでこの発問を挟むことで、授業後半においても思考の停滞なく学習を進めることができました。授業の終末には「学びの成長タイム」を設け、話合いを通して自己の学びの変容や成長を振り返る機会を大切にしています。
これらの実践を通じて、児童が自信をもって主体的に考えを深められるようになることを目指しています。

高学年
第五学年(社会)【水産業のさかんな地域】
第5学年では、児童が自分の考えをもつことはできるものの、発表することに抵抗を感じたり、相手に伝えることに難しさを感じたりするという課題があり、これを解決するための授業づくりに取り組んでまいりました。
この課題を克服するために、児童が「考えたい」「話し合いたい」と思えるような教材や資料を用意することで、発表への意欲を高めました。具体的な工夫としては、まず、「話合いへの意欲を高めるための資料提示」で話し合う必然性を生み出しました。
また、授業の展開では、養殖魚に餌を与えるために大量の天然魚が使われているという事実を知らせる「揺さぶり資料」を提示しました。これにより、児童の思考が揺さぶられ、これまでの自分の考えが必ずしも正しくない可能性に気付き、根拠となる別の理由を探したり、これまで以上に友達の意見を聞こうとしたりする姿が見られました。この資料提示によって、児童は課題について多角的な視点をもって改めて深く話し合い、最終的には話し合ってきたことをもとに、自分の意見をまとめ、発表することへとつながりました。これらの実践を通じて、児童が主体的に議論を深め、自分の考えを明確に表現できるようになることを目指しています。
第六学年(国語)【帰り道】
第6学年は、今年度学級編成により学級の人数が増加しました。それにより一時間の授業の中で全員が発表して考えを示すことが難しくなるという課題がありました。児童が自分の考えを伝えるという昨年度からの課題に引き続き取り組みながら、学級全体で考えをもち、話合いを進められるよう様々な手だてを講じました。
特に、自分の考えに自信をもてない児童のために、自由に席を立って交流できる「フラフレタイム」を考案し、自分とは異なる他者の考えに触れ、それを取り入れる機会を提供しました。それにより、児童は自分の考えを確かなものにし、主体的に伝えたいという力を伸ばせるようになってきています。また、「ポジショニング」という手法を用いることで、迷っている児童も含め全員が自分の立場を自ら選んで示す機会も確保しています。
さらに、児童の思考を深め、自分の考えを再構築できるよう、「揺さぶり発問」によって登場人物の変容を深く捉え直させ、新たな根拠や友達の意見を探求する姿勢を促したりしました。本文全体を見渡せる「全文1枚プリント」は、児童が考えの根拠となる叙述を見つけやすくする工夫の一つです。これらの実践を通じて、児童は話合いの中で友達の多様な考えに触れ、自分の考えを再構築する姿が見られています。
