2.ビオトープを生かした活動

 

(2)自然科学クラブ

 自然科学クラブではビオトープの環境調べを活動の一部として行っている。ビオトープ池の水質、ビオトープの土、ビオトープの生き物調べを実施している。水質検査の結果は、石神井川の水質とほとんど変わらなかった。においは石神井川よりもやや強く、濁りも見られた。土についてはビオトープの土と校庭の土に同じ種類の同じ大きさの木の葉を乗せ、分解の様子を調べた。その結果、ビオトープの土に乗せた葉が早く分解し、ビオトープの土のほうが土壌生物の活動が活発であることが分かった。10月に行った生き物調べでは、カマキリや甲虫、アリ以外はほとんど見つからず、子ども達は季節の移り変わりを実感することができた。

(3)生活科

 生活科では、「秋をさがそう」で、木の実や種を使った遊びを行った。ヨウシュヤマゴボウの実での色水遊びや、ノブドウの実の採集など秋を実感させることができた。冬は、氷の張った池や田んぼを中心に、冬をさがす活動が行われている。冬の朝のビオトープでは、霜柱を見つけた子が、目を輝かせて知らせに来てくれることもしばしばである。児童にとっては霜柱は都市化された地域では珍しいものである。学習活動でのビオトープの活用が、自然への関心を高め、日常的にビオトープにかかわり、自ら発見する驚き、喜びなどの感性を育てている。

 2・3年生はカブトムシの飼育活動に取り組んでいる。2年生は生活科として11月に落ち葉積みや幼虫観察、2月に落ち葉返しを行う。
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(4)理科

 理科では、生き物の採集、観察、季節による変化や生態系の学習に役立てている。

【1】3年生

 3年生では、昆虫の飼育と観察のために、食草となるクワ、キャベツ、夏ミカンを植えた。クワの葉でカイコを育て、キャベツや夏ミカンの葉からモンシロチョウやアゲハチョウの卵を採集し、飼育している。昆虫の体の仕組みや成長のしかたの学習にビオトープが役立っている。

【2】4年生

 4年生では、「四季の変化」の単元でビオトープが活用されている。池、田んぼ、菜園、草地、築山の植え込みがどのように変化するかを調べる野外活動が行われている。四季を通して観察記録をとり、それぞれの自然の変化と気温の変化との関係を捉えさせている。昨年度の「すずしくなると」の単元の学習では、池での水草の減少、色の変化、水面近くを泳ぐメダカの減少について捉えていた。草地での植物の数の減少、色の変化、実や種をつける植物が多いことが確認された。築山では、木の葉の数が減少したり、色が緑から褐色や赤に変化することに気づくことができた。このような生き物の変化と気温の変化を対比させることにより、生き物の変化は気温に深く関わっていることに気づかせることができる。
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【3】5年生

 5年生では「流れる水のはたらき」の単元がある。流水実験はビオトープの川で行っている。川の上流部では流れが速く岸を削り、下流部では流れがゆるやかで、扇状地ができる様子が観察できる。ビオトープを生かすことにより流れる水のはたらきや、上流、中流、下流の違いを比較しながら分かりやすく捉えることができるのである。この実験の結果を整理しまとめることにより新たな疑問や課題が明らかになる。「本物の川で水のはたらきを調べたい。」「川にはどのような生き物がいるのか知りたい。」などの課題をもち、課題を解決したいという意欲を高める。
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そこで、ビオトープの流水実験の発展として、「石神井川探検活動」を行っている。児童は、それぞれ課題をもち予想を立てながら石神井川での野外学習活動に取り組んでいる。場所は南田中団地付近の「平成みあい橋」から「南田中橋」までの約50mの区間。場所による流れの速さの違い、水中の動植物、水質、水温、透明度などを課題にして観察・実験を行っている。川に生息している動物はザリガニ、プラナリア、ヒル、ヤゴ、カゲロウ、カワゲラ、メダカ。水草としては、オオカナダモなどが見られる。児童は、生息する生き物の種類や個体数などから水がきれいであるか否かを判断し、改めて、自然の生き物のかけがえのなさ、地域の川をきれいにしていくことの大切さを実感している。

 ビオトープの池や田んぼには、ミジンコなどのプランクトンやメダカなどが多く発生している。そで、「人と動物のたんじょう」の単元では、ビオトープのプランクトンとメダカとの関係を課題として、水中での食物連鎖の仕組みについて調べさせている。この学習活動は6学年で扱う「自然の循環」を理解する上での土台を児童の中に形成すると考える。

【4】6学年

 6年生では、ビオトープを環境教育の学習の場として利用している。生物のつながりの学習ではビオトープに多く生息するダンゴムシが主役である。ダンゴムシが枯れ葉を食べ土をつくることを実験を通して理解させ、自然の循環を捉えさせている。ダンゴムシ以外の土壌生物も多数ビオトープに生息していることを調べ、豊かな自然の基礎を築いていることを実感させている。

(5)総合的な学習の時間

【1】3,4学年

 3,4学年ではカブトムシの飼育活動に取り組んでいる。11月に落ち葉積みや幼虫観察、3月に落ち葉返し、5・7月には幼虫および成虫の観察、11月には腐葉土搬出を行っている。かつて多くのカブトムシの生息した「ほりきた憩いの森」という地域の自然を生かした取り組みである。学校ビオトープとは隣接するテニスコートを囲んでいる植え込みの緑地帯とつながっている。そこで、緑地帯で結びつけられたこの2つのビオトープを一体のものとして調査、観察、飼育活動を続けている。

 カブトムシによってつくられた腐葉土は、どのような働きをもっているのかを他の土と比較させながら、自然の生き物が作り出す土のすばらしさを理解させ、自然の循環の巧みさ、大切さを捉えさせたい。

 今後の取り組みとしては、カブトムシが世代交代できるために必要なクヌギ、コナラの木の本数を調べること。「憩いの森」の植生、生き物の種類について学校ビオトープとの違いを調べ、様々な自然環境があって豊かな生態系が営まれることに気づく学習活動を予定している。

【2】5学年

clip_image0221.jpg  5学年は社会科の「日本の農業」との関連で、ビオトープの田んぼで稲作に取り組んでいる。昨年度(平成16年度)、ビオトープ造成完了の直前に完成した水田(5月)で代かき、田植えを行い、9月には無事収穫することができた。収穫した稲は脱穀、精米した後、世界の国々の米料理作り・試食会をそれぞれの国の特色についての研究発表も兼ねて実施した。保護者の方々の協力を得て、充実した総合的な学習の時間となった。

 脱穀後の稲藁はデンドロリーフの会の自然観察指導員の指導のもとで正月のしめ縄飾り作りに使った。難しい縄作りではあったが、指導員の親切な指導と子どもたちの協力により全員がしめ縄飾りを完成することができた。 2年目の平成17年度は、環境に良い画期的な方法として注目を集めている不耕起栽培法で稲を育てた。不耕起栽培法とは水田を耕さず、農薬、化学肥料などを使わず、土の中の生物の働きを生かす栽培方法である。根が広く深く張り、病虫害・冷害に強く、収穫量が多いとされている。しかし、台風で稲の一部が倒れ、収量が昨年度より少なかった。不耕起栽培法の良さが生かし切れないという課題が残った。

 収穫した米は米料理に使い、稲藁は正月飾りのしめ縄などの藁細工の材料にする。指導は自然観察指導員のデンドロリーフの会の会員の方々が行ってくださった。